2018年 05月 24日
スズキ4代目エスクード |
さてエスクードです。ここをご覧になっている方なら、筆者がスズキには辛い、特にスズキの普通車には激辛なのはご存知だと思いますが、先代エスクードは発表当時はともかく、10年近くに渡り作り続けられているうちに、ジムニーと同じくスズキの良心のような車だと感じていました。
発表時は大きすぎると思ったボディも、シティ派クロカンとしては本格的すぎるんじゃないの?と思った成り立ちも、没個性的だと思ったデザインも、長く続き続けているうちに個性となり味となっていたと思います。特にエクストレイルが3代目で道具感を喪失してからは、ほぼ唯一の存在とも言えるポジションを得ていたと言えます(ランクルも道具感ありますけど今は高級車でもあるんで)。
そんなエスクードがついにモデルチェンジを果たし4代目となりました。いつものように試乗記は劇的に遅れていますが、試乗自体はデビュー時にキチンとすませてあり、なんかもやもやとしたモノを当時のつぶやきに残していました(笑)。そんなもやもやはのちほど激辛ニコフでお届けしますが、あえて誉めるなら、ボディ&エンジンサイズのダウンサイジングを果たして、初代の都市型ライトクロカンのポジションに戻ったという点でしょうか?
2代目以降、北米需要に引っ張られて大型化&本格化が進んでいたのを、グッと引き戻したのは日本車にしては珍しいことだと思います。ラダーフレーム&FRベースの本格的4WD車だったエスクードを、SX-4とプラットフォームを共有するFFベースのSUVとしたおかげで、しなやかで軽快感のある乗り味を得ています。街中で運転するとほどよいサイズ感、高さとあわせて大変運転しやすい車です。
内装質感もスズキにしてはかなり頑張りました。相変わらずの黒一色内装なれどついにインパネ正面のシルバー加飾が銀色塗りっぱなしから、チェッカーパターンのメッキパーツに格上げされました。シートや内張りのスウェード調仕上げと合わせて最低限の質感は確保されています。ただプラ部分は相変わらずの全面ハードプラですけど(笑)。
ただやっぱり先代エスクードを気に入っていた人にとって、新型のFFベースのダウンサイジングSUVが正解かは微妙なところだと思います。同クラスのトヨタや日産でなく、あえてスズキのエスクードを指名買いをしていた人達にとっては、ラダーフレーム&FRベースの4WD車に、日本国内生産車と言うことに、意味があったはずで、FFベースのコスト優先輸入車では、全く別の車になってしまっているわけです。これでは乗り換える車がありません。またスズキの普通車はユーザーを裏切ってしまった形です。
新型の仕様は先代ユーザーの期待していたものとは別の車です。最初に記した軽量化を生かしたしなやかな乗り味も、燃費指向のエンジンも、先代ユーザーが求めるであろう使い方とは違う方向性です。急な坂道でも、荷物満載でも、多人数乗車でも、しっかりとした安心感がある運用が出来るのが、エスクードというSUVだったはずです。
象徴的なのが、スズキが推し進める軽量化思想の影響か、天井内張はペナペナで雨音の反響がけたたましかったです。これも先代のガッチリと守られているような車格を体験している人にとっては、安普請になったなとガッカリする点ではないでしょうか?
確かに世の中でヒットしているSUVは、FFベースのスタイリッシュで軽快なモデルが多いです。どちらかというと無骨な先代から、そう言う方向に舵を切ろうと思ったのは理解できなくもありません。でも、エスクードはエスクードだから指名買いされていたわけです。他と同じようなサイズ同じような車なら、わざわざスズキを買う必要はありません。
新型発表時に一番感じた難点は「メリットの裏返し」。ダウンサイジングを果たしたせいで、同じ5人乗りコンパクトSUVの2代目SX4との差別化が難しくなってしまっています。元々SX4はBセグだったのをモデルチェンジでサイズアップし、反対にエスクードはダウンサイジングで、見事に同じクラスのSUVに。せっかくダウンサイジングしたエスクード自体も、営業現場の判断で旧型を2年に渡り併売するという迷走です。
スズキはキチンと販売計画を立てているのでしょうか?軽自動車の税制変更を危惧し、普通車の車種倍増計画を打ち立てていましたが、その目標達成のためにただただ出してるだけで、そこにはユーザー側に立っての目線は全く感じられません。昔からスズキのユーザー軽視の姿勢は目に余ります。軽自動車でも、爆発的に売れたワゴンRがいつまでも安っぽくて、利益還元がされていませんでしたが、普通車を購入してくれたユーザーに対する裏切りは本当にひどいです。
ただのワゴンR拡幅車だった時代のソリオは、+やワイドと何度も名前を変えては「新型車」と偽ってその都度田舎のスズキびいきのおじいちゃんをだまし、韓国製の安普請セダンをアメ車として売りつけたり、自己満足のためだけに作ったキザシでも、無理して購入してくれたユーザーを売却時に大損させています。
総じてスズキには普通車販売の綿密な計画はなく、思いつきで作った車を無理矢理売りつけて、売れないと見るとその車を育てようともせずに簡単に見捨てる。全くユーザーのことを考えていないことは明白です。自動車評論家の間では、鈴木修会長の評価がムダに高いですが、浜松の小さな自動車メーカーが世界と渡り合って行くには、踏み台にされている多くのユーザーが居るという事をもっと考えて欲しいです。
残念ながら鈴木修会長の影響力がある限り、スズキの普通車は万人には勧められません。どうしてもその車を気に入って、乗り潰す覚悟がある人のみが乗る車です。それはエスクードに関しても同じです。本来の魅力を失ってしまった4代目を買うぐらいなら、同クラスでもっと売れ筋の格好良いSUVがありますので、そちらをオススメします。(2015年10月発表)
by sarorac
| 2018-05-24 23:59
| スズキ