2015年 04月 24日
三菱3代目eKワゴン(カスタム) |
今まで軽自動車を自社開発していなかった日産が、三菱と軽自動車製造の合弁会社として設立したのがNMKVです。今回紹介する3代目eKワゴン(カスタム)は、日産デイズと共にNMKVとして最初の車となります。
NMKVを立ち上げるメリットは、軽自動車開発の経験が無い日産にとって、短期間で失敗無くそのノウハウが学べると言う点。三菱にとっては、ここ10年激減した販売力で新型車の開発費を捻出できないところを、三菱の1.5〜2倍の台数を売ってくれる日産がカバーしてくれ、他社軽自動車メーカーと同じようなペースで開発が出来ると言う点です。
長期的視点で見ると、軽自動車製造のノウハウを身につけた日産が三菱を切り捨てる可能性が無いとは言い切れませんが、益子CEOが実権を握って以降、縮小政策で新型車の開発がほとんど進まない三菱にとっては、是非ともすがりつきたいプロジェクトだったのではないでしょうか?
これは三菱ユーザーにとっても渡りに船で、画期的プラットフォームで可能性はごまんとあったiですら開発費の問題で満足に生かせず、すでに開発の終わって絶版車となっていたトッポBJを再登板させるような、貧すれば鈍する状態の三菱から、まがりなりにも最新型の軽自動車が出る恩恵にあずかれました(三菱に見切りをつけて他社ユーザーになれば良いだけですが)。
また軽自動車のユーザーだけでなく、今までミラージュランサーあいるはコルトに乗っていた小型車のユーザーも、タイ生産のミラージュが、昨今のコンパクトカーの動向を見誤った大外れの安車であったため、乗り替える満足度の高いコンパクトカー/軽自動車を求めているところです。
そんなわけで三菱ユーザーの期待の星であったeKワゴンなのですが、これが・・・派手ではないもののしっかりとした軽自動車作りが特徴だった三菱と、昔から車の操安性には拘りがある日産が組んで開発した軽自動車が、どうしてこんなモノになるのか本当に理解に苦しむ駄作車なのです。発表当時の雑誌試乗記などではそれほど酷く書かれている印象がなかったのですが、再度検索して読んでみると、筆者が感じたような欠点はすべてオブラートにくるんでやんわりと指摘されていました(笑)。
まず乗り込む際にドアを閉めた時の音からあれ?っと思わされます。「ババンッ」とドアポケットに何かが入っていてそれがドアポケット内で踊っているような音がします。半ドアかと思い再度閉め直すとまた「ババンッ」。ドア内で何かが当たっているかのような(パワーウィンドーユニットなのかスピーカーなのか)音がするのですがこれが仕様のようです。
運転席に座ると、見た目の質感はそれなりに高いです。ブラインドタッチが出来ないので、車の操作系としては失格だと思うタッチパネル式のエアコンスイッチも、他社のモノよりはスイッチの大きさ反応の確実さは良いと思います。スポーティー仕様だとやたらと黒一辺倒内装になりますが、黒は樹脂パーツの質感が解りやすい色で、安物を使っているとバレやすいです。この車はその辺りを樹脂パーツそのものではなく、シートの織物に微妙な茶系の色を入れることで対応し、安っぽくなりがちな軽自動車の黒内装をうまくカバーしています。
フロントシートは一見肉厚で立派に見えるのですが、その調整代が昔ながらの国産車のソレで、なかなか良いポジションが見つかりません。変な位置にランバーサポートの張り出しがあり、これが調整できないのもシートポジションがビシッと決まらない原因だと思います。平板なイスなら自分で体の方を合わせることが出来るのですが、姿勢をある程度矯正させられるこのシートではそれも出来ず、2.3時間乗ると腰や尻に嫌なハリが出てしまいます。
反対に後席は見た目通りの肉厚しっとり系の座り心地、後席に乗っての試乗は出来ませんでしたので、実際は突き上げなど有るかも知れませんが、イス単体での出来は断然前席より後席の方が良いと思います。
では運転してみます。試乗したのはスポーティーグレードeKカスタムのノンターボ車。もうね。とにかくぶわぶわです(泣)。ちょっとしたウネリでもあおられスピードが出ていればジャンプ。カーブでは激しくロール。町中の交差点を曲がるだけでもぐらっと傾きます。こんな柔らすぎる足回りでは、快適に運転出来るのは実際30キロ程度まで。21世紀の軽自動車に70年代のアメ車の魂が宿ってます。乗ってて怖いので自動的に安全運転が出来ますね。
動力性能も、昨今ノンターボでも力不足を感じない軽自動車が増えてきてますけど、eKワゴンは昔ながらの軽自動車って感じです。スタート時アイドリングストップ再始動分出遅れて、さらに力の無さでどんどん追いていかれる。その辺りはCVTのセッティングで調整できると思うんですけど、とにかくカタログ燃費をよくしたいのか、物凄く燃費優先のセッテイングになっています。
昔CVT黎明期に良く言われていた「アクセルを踏んでも回転だけ上がってスピードが一向についてこない」。今時の車なのにこのまんまの感想を抱きます(笑)。スピードが40キロ程度まで上がると、音はうるさいモノの普通に踏んだ分だけパワーが出る感じなので、とにかくスタート時に燃料を食わさないようにしているのだと思います。百歩譲ってエコモードがこのセッティングなら構いませんが、そんなモノを解除するボタンはどこにもなく、普通に走る車が欲しければターボ仕様を買って下さいって事みたいです。
あと、バックミラーの形状なのか取り付け位置の問題なのか、終始自分の姿が1/3写ってるのもブサ面としては気に触ります。
車というモノは不思議なもので、家や保険の次に高額な商品でありながら、あまり現物をチェックしないで購入されていきます。試乗にしてもディーラーの周りを速度40キロ程度で10分ぐらいなルートがほとんどです。これではその商品がどんなものかはほとんど解りません。実際eKワゴンもこの試乗条件であれば、馬脚を現す可能性はほとんどありません。
結果、長年培われたブランド力や担当セールスマンの人柄などにより車は買われていくのですが、このeKワゴンを購入した人が、次も日産三菱の軽自動車、担当セールスマンから買おうと思うでしょうか?車なんて車好き以外は善し悪しあまり解らないものだとも言われますが、さすがにこれとムーブやワゴンRを乗り比べたら、どんな素人でも出来の悪さに気づくのではないでしょうか?
いや担当セールスはむしろ、他社との乗り比べやターボモデルを勧めて、自分の誠実さをアピールすべきです。それが次の商談に繋がる唯一の方法です。正直車としての出来はそれほどまでに酷いです。デザインを気に入ってどうしても欲しいというならターボモデル以外の選択肢はありません。ぐらぐら傾いて危なく、結果スピード40キロ以下で安全運転するしかないノーマルエンジンモデルは、お年寄りのシニアカーとしてならオススメします。(2013年6月発表)
http://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/mitsubishi/ek-wagon/F003/
NMKVを立ち上げるメリットは、軽自動車開発の経験が無い日産にとって、短期間で失敗無くそのノウハウが学べると言う点。三菱にとっては、ここ10年激減した販売力で新型車の開発費を捻出できないところを、三菱の1.5〜2倍の台数を売ってくれる日産がカバーしてくれ、他社軽自動車メーカーと同じようなペースで開発が出来ると言う点です。
長期的視点で見ると、軽自動車製造のノウハウを身につけた日産が三菱を切り捨てる可能性が無いとは言い切れませんが、益子CEOが実権を握って以降、縮小政策で新型車の開発がほとんど進まない三菱にとっては、是非ともすがりつきたいプロジェクトだったのではないでしょうか?
これは三菱ユーザーにとっても渡りに船で、画期的プラットフォームで可能性はごまんとあったiですら開発費の問題で満足に生かせず、すでに開発の終わって絶版車となっていたトッポBJを再登板させるような、貧すれば鈍する状態の三菱から、まがりなりにも最新型の軽自動車が出る恩恵にあずかれました(三菱に見切りをつけて他社ユーザーになれば良いだけですが)。
また軽自動車のユーザーだけでなく、今までミラージュランサーあいるはコルトに乗っていた小型車のユーザーも、タイ生産のミラージュが、昨今のコンパクトカーの動向を見誤った大外れの安車であったため、乗り替える満足度の高いコンパクトカー/軽自動車を求めているところです。
そんなわけで三菱ユーザーの期待の星であったeKワゴンなのですが、これが・・・派手ではないもののしっかりとした軽自動車作りが特徴だった三菱と、昔から車の操安性には拘りがある日産が組んで開発した軽自動車が、どうしてこんなモノになるのか本当に理解に苦しむ駄作車なのです。発表当時の雑誌試乗記などではそれほど酷く書かれている印象がなかったのですが、再度検索して読んでみると、筆者が感じたような欠点はすべてオブラートにくるんでやんわりと指摘されていました(笑)。
まず乗り込む際にドアを閉めた時の音からあれ?っと思わされます。「ババンッ」とドアポケットに何かが入っていてそれがドアポケット内で踊っているような音がします。半ドアかと思い再度閉め直すとまた「ババンッ」。ドア内で何かが当たっているかのような(パワーウィンドーユニットなのかスピーカーなのか)音がするのですがこれが仕様のようです。
運転席に座ると、見た目の質感はそれなりに高いです。ブラインドタッチが出来ないので、車の操作系としては失格だと思うタッチパネル式のエアコンスイッチも、他社のモノよりはスイッチの大きさ反応の確実さは良いと思います。スポーティー仕様だとやたらと黒一辺倒内装になりますが、黒は樹脂パーツの質感が解りやすい色で、安物を使っているとバレやすいです。この車はその辺りを樹脂パーツそのものではなく、シートの織物に微妙な茶系の色を入れることで対応し、安っぽくなりがちな軽自動車の黒内装をうまくカバーしています。
フロントシートは一見肉厚で立派に見えるのですが、その調整代が昔ながらの国産車のソレで、なかなか良いポジションが見つかりません。変な位置にランバーサポートの張り出しがあり、これが調整できないのもシートポジションがビシッと決まらない原因だと思います。平板なイスなら自分で体の方を合わせることが出来るのですが、姿勢をある程度矯正させられるこのシートではそれも出来ず、2.3時間乗ると腰や尻に嫌なハリが出てしまいます。
反対に後席は見た目通りの肉厚しっとり系の座り心地、後席に乗っての試乗は出来ませんでしたので、実際は突き上げなど有るかも知れませんが、イス単体での出来は断然前席より後席の方が良いと思います。
では運転してみます。試乗したのはスポーティーグレードeKカスタムのノンターボ車。もうね。とにかくぶわぶわです(泣)。ちょっとしたウネリでもあおられスピードが出ていればジャンプ。カーブでは激しくロール。町中の交差点を曲がるだけでもぐらっと傾きます。こんな柔らすぎる足回りでは、快適に運転出来るのは実際30キロ程度まで。21世紀の軽自動車に70年代のアメ車の魂が宿ってます。乗ってて怖いので自動的に安全運転が出来ますね。
動力性能も、昨今ノンターボでも力不足を感じない軽自動車が増えてきてますけど、eKワゴンは昔ながらの軽自動車って感じです。スタート時アイドリングストップ再始動分出遅れて、さらに力の無さでどんどん追いていかれる。その辺りはCVTのセッティングで調整できると思うんですけど、とにかくカタログ燃費をよくしたいのか、物凄く燃費優先のセッテイングになっています。
昔CVT黎明期に良く言われていた「アクセルを踏んでも回転だけ上がってスピードが一向についてこない」。今時の車なのにこのまんまの感想を抱きます(笑)。スピードが40キロ程度まで上がると、音はうるさいモノの普通に踏んだ分だけパワーが出る感じなので、とにかくスタート時に燃料を食わさないようにしているのだと思います。百歩譲ってエコモードがこのセッティングなら構いませんが、そんなモノを解除するボタンはどこにもなく、普通に走る車が欲しければターボ仕様を買って下さいって事みたいです。
あと、バックミラーの形状なのか取り付け位置の問題なのか、終始自分の姿が1/3写ってるのもブサ面としては気に触ります。
車というモノは不思議なもので、家や保険の次に高額な商品でありながら、あまり現物をチェックしないで購入されていきます。試乗にしてもディーラーの周りを速度40キロ程度で10分ぐらいなルートがほとんどです。これではその商品がどんなものかはほとんど解りません。実際eKワゴンもこの試乗条件であれば、馬脚を現す可能性はほとんどありません。
結果、長年培われたブランド力や担当セールスマンの人柄などにより車は買われていくのですが、このeKワゴンを購入した人が、次も日産三菱の軽自動車、担当セールスマンから買おうと思うでしょうか?車なんて車好き以外は善し悪しあまり解らないものだとも言われますが、さすがにこれとムーブやワゴンRを乗り比べたら、どんな素人でも出来の悪さに気づくのではないでしょうか?
いや担当セールスはむしろ、他社との乗り比べやターボモデルを勧めて、自分の誠実さをアピールすべきです。それが次の商談に繋がる唯一の方法です。正直車としての出来はそれほどまでに酷いです。デザインを気に入ってどうしても欲しいというならターボモデル以外の選択肢はありません。ぐらぐら傾いて危なく、結果スピード40キロ以下で安全運転するしかないノーマルエンジンモデルは、お年寄りのシニアカーとしてならオススメします。(2013年6月発表)
http://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/mitsubishi/ek-wagon/F003/
by sarorac
| 2015-04-24 17:46
| 三菱