ホンダN-BOX SLASH |
ざっくり言えば、立体駐車場に入れないハイト軽が4車種もゾロゾロ。さらにカスタムという名の顔替えも加わると本当に訳がわからなくて、こんな目クソ鼻クソ程度の差別化を本当にユーザーは望んでいるのか?と思いますが、ダイハツやスズキも含めて、これが正義だと思う人が多くいるからこその造り分けなんでしょうね。
さてそんな立体駐車場に入れないシリーズ第5弾としてホンダが投入したNシリーズの末っ子が、今回紹介するN-BOX SLASHです。簡単に言うと、スーパーハイト軽として一度めいっぱいまで高くしたN-BOXの全高約1800ミリから、わざわざ100ミリ切り取ってN-WGNサイズにした不思議(笑)。だったらN-WGNで良いんじゃないの?とサイズだけ見れば誰もが思うところ。が、そのスタイルを見れば驚きの格好良さで、旧来のハイト軽文法で作られたN-WGNとは全くの別物です。
アメリカのカスタムカーの手法として、ピラー部を切断して屋根を下げるチョップトップというモノがありますが、N-BOX SLASHはまさにこれ。N-BOXの屋根低くしたバージョンで基本的にフロントまわりと腰の位置はN-BOXと共通です。しかも元々ムダに高いスーパーハイト軽ベースなので、低めなウィンドーグラフィックからは想像できないほど、快適な室内空間が確保されています。
屋根が低い以外はほとんどN-BOXと差がない前半分と違い、Bピラー以降はN-BOX SLASHオリジナルなデザイン。切れ上がっていくウィンドーラインをホイールアーチのプレスラインで反復したり、屋根とボディのツートーンの切り替え部(溶接部分?)にビレット風パネルがアクセントとして入れられてたりで、本当ホンダはコンセプトがしっかりしてて、箱のデザインの車作らせたら良いモノを作ります。
さらにN-BOX SLASHのハイライトは、外装カラーとコーディネイトされた、5パターンの凝った内装です。60年代のアメ車風の実にワクワクする内装を、古いアメ車のような維持費やサイズを気にせず自分のモノに出来る。まさに軽自動車バブルの今だからこそ企画できた、有る意味素晴らしい「ばか車」です。ただホンダお得意かつ相変わらずの商売の汚さで、最上級グレードじゃないとCMや雑誌で取り上げられているオシャレな仕様は選べない難点。そうするともはや軽自動車の価格では無いんですよね。
オシャレするには金が掛かる。当たり前のことですが、せっかく夢が持てる軽自動車なんですからねぇ?それがわかっているのか、意外な程どのディーラーにも最上級仕様の試乗車が配車されておらず、地味外装に地味内装な組み合わせばかり。試乗車上がりに期待が出来ないとなると、数年後の中古車市場は、今最上級仕様を購入してくれるサムライだのみです。今から手ぐすね引いて待ってる貧乏車好きの為に頑張って購入してください(笑)。
軽自動車としては高めな価格設定ですので、内装質感はなかなか。ここにオシャレ仕様ぶち込まれたらその配色の豊かさで、文句のつけようがない感じ。こういう余裕が普通車でも欲しいんですけど、デミオぐらいなんですよね・・・ホンダはフィットとか売れてるんですから、内装質感もっと上げて欲しいです。あとシートを前めにセットすると、身長大きめの人はセンターコンソールが足に当たっていやーんな、典型的ミニバン配置です。
試乗したのはノンターボモデル。乗り心地自体は、可もなく不可もなくの若干ぴょこぴょこするいわゆる軽自動車の乗り心地。どちらかというと固い足回りの多いホンダ車としては、乗り心地柔らかで万人向き。乗り心地と合わせて雰囲気楽しんで流して乗る車なのでノンターボ程度の力で十分かと。夏でもバカみたいに窓開けておねーちゃん物色しながら、若者二人でたらたらすると絵になりますね。無事おねーちゃん二人確保できたらエアコンオン。なんて80年代な車なんでしょう。
上記したようにホンダがプレリュード辺りで切り開いたナンパスケベカー。いや失礼デートカー。その役割はクーペみたいな背の低いモデルから、RV/ミニバンを経て背の高い車が当然となりました。ミニバンではファミリーカーなので、それより少しパーソナルなモノ。そうして生まれた平成不況世代のデートカーはホンダのS-MXで始まったと思います。
早速それを研究してトヨタが放ったのが、ヴィッツベースでより安く生み出された初代bB。あっさりS-MXからその座を奪いこの世の春を謳歌するかと思いきや、2代目でマッタリモードや11スピーカーとより若者にすり寄ったつもりが、僕らが望むのはそんな車じゃありませんと、もっとかわいい系ほんわかデザインの日産キューブにデートカー王座を奪われます。
王座につくと調子に乗るのは日産も同じでした(笑)。より凝ったデザインで酔いしれた3代目キューブは、一部に好意的に受け入れられたモノの、世間的にはやり過ぎの評価。欧州自動車ジャーナリストに踊らされた輸出も大失敗。と言った流れで現在空位のデートカー王座。
回り回ってその座につくのは、元祖ホンダのN-BOX SLASHなんじゃないかと思うんですけど、2代目bBを思わす8スピーカーや、3代目キューブのやり過ぎデザイン。何よりプレリュードからどんどん価格帯、クラスが下がって軽自動車まで来たにも関わらず、高すぎるN-BOX SLASHでは、その座をモノにするのはムリなんでしょうか。(2014年12月発表)
https://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/honda/n-box-slash/F001-M001/