レクサスHS |
そのレクサス。元々ラインナップにハイブリッド車は揃えていましたが、今回遂にハイブリッド専用車としてこのHSを発表。発表以来HSは、プリウスが減税終了時期までに納車されないと解ったお金持ちなユーザーの乗り換え効果で、レクサス始まって以来のヒット車種となりました。
と、現状はウハウハなレクサスHSですが、なかなか前途洋々とは行かないようです。既に多くの媒体に掲載されていますが、このHSのトヨタ版が「サイ」と言う名で11月にも発売されるらしいからです。プリウスとHSは同じプラットフォームを使っていますが、それでも明確に、排気量や価格帯、仕上げ等で別のクラスの車と棲み分けが出来ています。
しかしどうやらサイとHSはパネル類も共用する兄弟車で、シルエットや内装骨格もほぼ同じ車。となると、単純に仕様の差が価格の差となるわけですから、レクサスの作り込みや過剰な装備を必要と思わない人は、HSではなくサイを選ぶようになるでしょう。
レクサス店が出来てから、筆者の足はなかなかディーラーに向かいませんでした。事前に漏れ伝わってきた情報などから敷居の高さを感じてしまい、買いもしないのに(買えないのに)車を見に行くことに気後れしてしまったのです。以前のようにトヨタブランドであれば、セルシオであれアリストであれ、アムラックスに行けば実車を心おきなく見れたのですが、レクサスになってしまうとアムラックスにはLSもGSも展示されません。
ベンツやBMWも高級車ディーラーですが、輸入車だからと言う免罪符も有りますし、最近ではAクラスやミニなど手頃な価格の車も扱うようになったので、それほど敷居の高さを感じません。国産車なのに敷居が高い。その辺りがレクサスの販売が伸びない要因の一つでは?と思います。
そんなわけでレクサスディーラーに行くには、いつもそれなりの覚悟が必要なのですが(笑)今回のHSは、筆者ぐらいの年格好の人間が見に行ってもおかしくないクラスなので、発表時の混雑が収まった頃を見計らって見に行きました。
外観の印象は写真等の印象通り、やはりずんぐりむっくりしていてレクサスブランドと言うよりトヨタ車な感じ。顔つきやモール類の気の配り方でなんとかレクサスっぽくしてますが、シルエットだけ見るとプレミオ/アリオン系の臭いがしてしまいます。この辺りもトヨタブランドのサイに引っ張られている感じがします。
中に入ってみると、そこはレクサスな仕上げの高級感。革の使い方、ステッチの入れ方等、チリの合い方にのみ拘ってる大衆車には出来ない仕上がりです。ただここでもトヨタな臭いは見え隠れします。オーリス→プレイド→プリウスと無理して使ってきた、運転席と助手席を分断するインパネが、このHSでも使われています。それでもインパネから肘掛けまで繋がっているのはなんとか止め、幾分圧迫感は軽減されましたが、本当この基本仕様を決定したデザイナーは猛省してもらいたいところです。
試乗を勧められたのでほいほい乗ってみます。短い試乗コースですので、たいしたことは言えませんが、個体差なのか、レクサス仕様で他が静かすぎるからか、プリウス試乗時にはあまり感じられなかった、回生ブレーキ作動時の音が結構目立つなと言う印象です。乗り心地に関してはプリウスでも十分な仕上がりだったうえに、それより車重の重いHSですから。一般ユーザーが使う範囲では十分心地好い乗り心地と言えるのではないでしょうか?
現状ハイブリッド専用車は、インサイト、プリウス、HSしか有りません。これら3車は微妙にクラスが違いますから、それほどお互いを食い合うこと無く売れ続けています。インサイトとプリウスではハイブリッドの考え方からして違います。筆者はプリウス圧勝だと思うますが、価格帯やサイズ、アンチトヨタ、デザイン、色々な判断でインサイトを選ぶのも解ります。
プリウスとHSはハイブリッドの考え方自体は一緒ですが、クラスにしては安っぽいプリウスの仕上げと、レクサス仕様でそれなりにお金を掛けたHSでは、これまたクラス以上の差が開いていてユーザーが迷うことは少なそうです。しかし今後トヨタに投入されるサイとの間には、それほどの差が無いのは明らかです。そうなった時にユーザーはHSを選ぶでしょうか?
上記したようにレクサスに敷居の高さを感じているユーザーは多いはずです。この不況下だからこそハイブリッド車が売れているのに、同じ車の高い方をわざわざ買いたがるユーザーがそれほど居るとも思いません。筆者にはHSのヒットはつかの間のバブルとなって、レクサスディーラーを苦しめるような気がしてなりません。何より今HSを購入したユーザーに、ほぼ同じ形で価格もぐんと安いサイが出た時にどう言い訳するのでしょう?
HSは車としては良く出来ていると思います。ですがレクサスで売る車なら、明確にトヨタ車と作り分けるべきではないでしょうか?プラットフォームを共用しても、ドンガラのデザインはレクサスオリジナルであるべき。作り込みや仕様だけでなく、目で見てトヨタと違うと解る部分にも「レクサス代」は掛かってるはずなのですから。