トヨタ16代目クラウン(セダン) |
16代目クラウンはすでにクロスオーバーを当ブログでも取り上げ済みですが、クロスオーバー/スポーツ/エステートは全て同じFFベースのプラットフォームなのに対して、唯一このセダンのみがレクサスLSなどと同じFR用プラットフォームを採用する異母兄弟。クラウンの本流はFRでしたしクロスオーバー発表時にFFベースという事が大きく問題にもなったのでセダンの試乗を楽しみに待っていました。
あーこれは本物。これだけは本物。
さすが800万円クラスを痛感させられました。これが皆が思い描くクラウン。クラウンのあって欲しい正しい姿。それも2.0Lロイヤルではなく(笑)マジェスタ復活というか印象としては初代セルシオが登場した時のインパクトってこんな感じだったんじゃないでしょうか?
筆者は自分が購入出来そうもない車の試乗はあまり行わないので、超高級車(センチュリーとかベンツSクラスとかロールスとか)の経験値が不足しているのですが、今まで乗ってきた車の中で最上の乗り心地の車だと思いました(好きな乗り心地はまた別の話し)。静粛性重厚感全て今まで体験したのとは別次元の乗り物で、筆車の好きな「ふわふわ」ではないけど終始フラットでかつ物凄く湿度が高いしっとりとした乗り心地です。
機械の塊の車の評価が湿度というのも変な話しですが、無味乾燥の車と比べると良い乗り心地の車はしっとりしてると感じてしまうのですから仕方ありません(笑)。アクセルに対する反応、ハンドルの操舵感、ブレーキのタッチ。すべてが過剰でなく適当。言いふらされた陳腐な表現ですが見事に調律が行き届いている感じがします。
サイズはざっくり5m&1.9mでバカデカイ上に、水平貴重なデザインもあり存在感は抜群です。いわゆるメッキでギラギラしたクラウングリルはついておらず、グリルと言われてる部分も旧来の感覚で言えばエアインテークにすぎないのですが、この日本車は何ですかと問われれば、迷わずクラウンと答えてしまうデザインだと思います。
リアは最近の流行にのってファストバック形状で、トランクフードはデザイン上ガラスと錯覚させるなかなか無理矢理なデザインです(笑)。サイドガラスも先代クラウンから採用された6ライトウィンドーですが、ここはCピラーの面積を大きくしてフォーマルな感じを強めても良かったかもしれません。
内装デザインは基本的にはFFプラットフォーム系と同じで、そこに木目調バネルなどを増やして質感を上げています。最初のクロスオーバーが物凄くプラスチッキーで叩かれましたが、その後スポーツ→セダンと徐々にマシになってきました。価格帯で見れば、クロスオーバーは435万〜660万、スポーツは590万〜765万、セダンは730万〜830万。先代クラウンは510万〜740万だったので、今にして思うとクロスオーバーは仕方なかったかなと思います。ただセダンの800万円クラスとしてはもう少し頑張りましょうな気持ちも拭えません。
セダンはFRプラットフォームなのでセンタートンネルが高く5人乗りでありながら真ん中に人が乗るのはほぼ不可能です。むしろショーファー要素を考えれば4人乗りで良かったと思います。この部分はドライブシャフトが通るから高いというより水素タンクを置く都合上高くなってるようで、同様に後席下にもタンクが搭載されていて、後席の着座位置は高くミニバンのシアターレイアウトのように見晴らしがよいです。ただその分頭上空間は狭く、背の高い人は乗り込み時から頭をかがめて過ごす時間が多くなりそうです。水素タンクの影響はトランクにも現れ、ガソリンタンクが後席背後にあった昭和のセダンのようなトランクルームのたたずまいです(笑)。
最初に絶賛した乗り心地ですが、企業VIPの重役車は今やすっかりアルファードらしいですけど、これ乗り比べたら広さ以外ではFRセダン圧勝だと思うんですよね。上記ネガティブ要素としてあげた水素タンクですが、ポジティブ要素として水素タンクがその位置にあるからこそボディ剛性が飛躍的に上がっているそうです。最新のアルファードや補強が行き届いた(と言われてる)レクサスLMに乗った事がないのでわかりませんが、FFミニバンはどうしたってフロアワナワナする印象が拭えません。シエンタベースのJPNタクシーと昔ながらのコンフォート比べたら、後者の方が断然乗り心地良いのと同じではないでしょうか?
クロスオーバーを取り上げた際に、その時はまだ詳しい説明がなかったセダンに対して筆者はこう記しています。「この車(クロスオーバー)を受け入れられない人には、ミライベースのFRセダンクラウンを、多分旧来よりグンと高い価格で売るつもりでしょう。本当にコストをかけた良いモノにはしっかりとした値段をつけ、それを納得してくれる人にだけ売る。言わばセダンがマジェスタの役割でトップオブトヨタ。そして納得してくれる人の数が多ければ次期型があり、少なければ旧来のクラウンは今度こそ消滅するのだと思います。」
クラウンセダンはほぼこの通りの仕様で登場しました。そして現在ハイブリッドは受注停止とクラウンセダンキッチリと売れています。サイズが大きすぎる問題はありますがやはり本物のクラウンを待っている人は多かったようです。また本文中何度も「800万円の高額車」的取り上げ方をしてきましたが、実は本来の意味での最後のマジェスタである5代目2009年〜モデルの価格は610万〜792万でした(6代目モデルは格安ストレッチ版に過ぎないので)。
実は「クラウンの一番高いの持って来てくれ」だと10年以上前のモデルと価格があまり変わっていないんですよ。それでこの完成度なら売れるのうなずけますよね。クラウンセダン。素晴らしく良い車でした。(2023.11月発表)
https://carview.yahoo.co.jp/ncar/catalog/toyota/crown_sedan_2/FMC001-MC001/